藤井俊夫「違憲審査におけるLRAの基準」千葉大学法学論集27巻1号について
京都大学大学院法学研究科・曽我部真裕先生のtweet→藤井俊夫「違憲審査におけるLRAの基準」千葉大学法学論集27巻1号。法科大学院生向けに同基準の使い方を詳しく説明。法学部図書室にもありますが,そのうち電子版も公開される模様。http://mitizane.ll.chiba-u.jp/curator/index.html …
を読んで早速書庫に潜り込み、文献コピーしてきました。
藤井先生は憲法訴訟論のあり方とその教育について、当事者目線からの論証を意識しつつ、違憲審査基準がとのように当事者によって援用されるか、また裁判所はそれに対してどのような判断を下すか、という点について詳しく説明してくれています。
内容としては、LRA論は立法目的が正当であることを前提として、より制限的でない他の選びうる手段があるかどうかを審査するものですが、立法目的の抽象度が高ければ手段を広げることになり、結果として規制手段が合憲とななりやすいのではないかという鋭い指摘が個人的には一番の収穫でした。藤井先生は、「実質的には立法目的そのものについての批判を含まざるを得ないかもしれない。」(同論文16ページ)と述べております。
確かに、立法目的をきちんと具体的に分析し論証するというというのは原告側の訴訟代理人、弁護人として憲法論の本質に迫るものであり裁判所を説得させる上で重要な要素になるように思います。私自身、立法目的を簡単にしか論述しておらずもっぱら手段審査のみを厚く書くような姿勢だったので、藤井先生の見解は自分自身の答案を大いに反省する機会となりました。
同論文では、司法試験の問題を使いLRAについて説明してくれているので、自分で司法試験の問題を検討したあとに読むと効果的ではないかと思われます。
藤井先生は、戸松秀典、野坂泰司編「憲法訴訟の現状分析」(有斐閣、2012)の中で、適用違憲と法曹教育という論文を書いておられます。こっちも読まないといけませんね。
- 作者: 戸松秀典,野坂泰司
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2012/04/04
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (1件) を見る
H24予備試験の反省⑤
茹だるような暑さが続きますね。大学は試験期間でしょうか。
今日は、H24予備試験論文二日目について書いていこうと思います。
法実務基礎
法実務基礎刑事については、設問1は、去年と同様犯人性の問題が出ました。犯人性の認定の仕方は、犯人側の事情をあげて、被告人側の事情を論じ、犯人側と被告人側の事情がどういう点で一致し、被告人が犯人であるという推論過程を示すことでしょう。
甲が犯人であるという積極的な事情を確実性の高い順に論じました(部屋に残されたレシートに甲の指紋がついていたこと、ドアノブに甲の指紋がついていたこと、カードを甲が近接した時点で所持していたこと、犯人と甲の体格年齢が一致すること)。他方、甲が犯人であるかどうか疑わせる事情もきちんと評価しました(緑色のジャンパー、サングラスを甲が着用していたか不明、犯人が使用したナイフと甲宅にあったナイフが一致するか不明)。
結論としては、消極的事情を考慮したとしても、積極的事情から甲が犯人であると認定しました。
設問2は伝聞の処理の問題でした。Aの証言に甲の発言が含まれており、甲の発言の要証事実は甲がアリバイ作りをしていることから甲の犯人性であろうと思われます。伝聞の定義(形式説)にしたがうと、甲の発言は供述内容の真実性が問題となりますから、伝聞例外の処理をする必要があります。刑事訴訟法324条1項→刑事訴訟法322条1項本文「不利益な事実の承認」にあたると現場では考えました。そうすると、伝聞例外の要件は満たすので、規則205条1項「法令の違反」はなく、刑訴法309条の異議申立は却下されるべきであると結論を述べました。
犯人性の起案の仕方については、伊藤塾の呉先生の無料公開講座http://www.itojuku.co.jp/shiken/yobi/event/koukaikouza/DOC_017366.htmlで十分まなぶことができます。
法実務基礎民事は、時間との戦いでした。設問1は新司法試験で出題されてもおかしくない要件事実を問う問題でした。法律要件分類説によりつつ条文に即して説得的な論述を心がけました。
設問2は二段の推定の話ですかね。。。
設問3は、何を書いたか覚えていません。民訴法114条2項の問題ですかね。。
設問4は、「正当な理由」(職務基本規程56条)の解釈の問題でした。小問(2)は、会社法330条、355条の規定に照らし、自社を守るためR社の倒産情報を漏らしてもよいと書きました。。これでいいのかな。
自己評価はCです。刑事が書けたと思っただけに民事でできなかったのは悔しいです。
民法
設問1は、民法総合事例演習で解いたことがあるような問題でした。物上保証人は責任財産の範囲でしか負担を負わないので事前求償はできないこと、条文の文言(民法351条、372条)に反すると書きました。設問1は、条文の趣旨から考えさせる問題でした。
設問2は、条文をあげて処理しただけです。遺留分減殺請求は択一でも出てますしね。
- 作者: 松岡久和,山本敬三,潮見佳男
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2009/03/27
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 8回
- この商品を含むブログ (3件) を見る
自己評価はBです。
商法
設問1は、本件売買が「重要な財産の処分及び譲受け」(会社法362条4項1号)にあたるとした上で、売買契約が有効かどうかは、93条類推で処理しました。
解除に関しては、商法526条の問題でしたね。
設問2は、手形法の問題。手形法16条2項の悪意重過失の解釈の問題でした。悪意の解釈が、原因関係の不存在を知っていたことを意味し、そのような事情を知っていた者は手形の支払い決済機能強化の恩恵を受ける資格はないと論じました。択一でも問われてましたね。
条文は必死に探しましたよ笑
自己評価はBです。
民事訴訟法
設問1は争点効の問題ですか?司法試験の雑感等でも言われているように、判例がある場合はそれを踏まえた論述をしなければならないにもかかわらず、いきなり争点効の論述を書いてしまい爆死。
設問2は、おそらく相殺の順序の問題でしたが、それに気がつかず、既判力が「対抗額」(民事訴訟法114条2項)が一部にしか生じないとし、その理由がY後訴で争うことができないから・・なんていう意味不なことを書いて時間ギリギリで終了しました。
自己評価はGです。
二日目は午前3時間、午後3時間30分の試験時間であり、最後のほうは手が動かなくなります。あと、私は東京の武蔵大学で受験したのですが、部屋が結構寒かったです。上着は持っていけばよかったと思いました。
以上が、予備試験論文までの反省と実感です。
H24予備試験の反省④
暑い日が続きますね。
今日は予備試験論文の反省について書いていこうと思います。六法だけで,答案構成をもとにした簡単な再現です。
【一日目】
憲法
国民審査の問題でした。一瞬何を書いていいか分からず焦りました。そういう時こそ条文から考えていこうと思いました。
設問1:原告側としては,信任する裁判官に○をつけられないという制約。信任する裁判官に○をつけるというのは,「固有の権利」(憲法15条1項)にあたり,憲法15条1項の趣旨が憲法79条にも及ぶと。信任する裁判官に○をつけられないのは,国民審査法の立法不作為。国民審査は「固有の権利」(憲法15条1項)。特段の事情がない限り制限することはできない。
設問2:被告側としては,国民審査は解職制度。×をつけるだけで司法に対する民主的コントロールを及ぼすことは可能。○をつけることは司法に対する民主的コントロールが過度に及ぶおそれがある。
私見では原告側の見解によりつつ,○をつけることは司法に対する民主的コントロールが過度に及ぶおそれがあるものの,裁判官には身分保障等の制度があるから,○をつける制度をとることで司法の独立が侵されることはない。したがって,信任する裁判官に○をつけることができる規定を設けないのは,立法不作為であり,憲法15条,79条に反する。
自己評価はDです。
行政法
憲法で時間を食い,行政法は時間があまりありませんでした。書いた内容は,聴聞手続きをやっていないという手続的違法,処分の相手が違うという処分理由の実体的違法を書きました。理由付記の程度の問題を触れていなかったのは致命的だったかなと反省してます。ただ,なお書きにはきちんとしたがい,乙市行政手続条例の引用は正確に行いました。
論点落ちがあるので自己評価はD。
刑法
書くこと多し。比較的簡単だと思いきや,個人的には,乙がAを怪我させてしまったことをどう評価するか悩みました。過失の共同正犯?
書ききったものの,乙の罪責の処理がどう響くか。。自己評価はCです。
刑事訴訟法
古江先生の事例演習刑事訴訟法(有斐閣)と同じ問題キター・・・となったものの,若干規範がふるゆわになってしまいました,とくにビデオカメラによる撮影録音が。事例2の事情は,捜査の適法性を論じるにあたって使うのでしょうか。強制or任意?任意ならば任意捜査が正当化される要件を立てて,自分のたてた規範に正確に当てはめするように心がけました。
ただ,判例規範はもっと正確に書くべきだったと日ごろの勉強姿勢をあらためなければならないと反省中です。自己評価はD。
- 作者: 古江頼隆
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2011/02/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- クリック: 9回
- この商品を含むブログ (14件) を見る
一般教養
何を書いていいか分からず。とりあえず行数だけは埋めました。答案構成なしで書きはじめました。設問1は生活保護バッシングに関して。設問2は歴史や他国での出来事などから人間の意思決定プロセス等要素を抜き出し法則化することにより,将来の予測モデルを立てることができるのではないか・・・みたいな意味不なことを書いて終了しました。
自己評価はFです。
H24予備試験の反省③
択一後の予備試験論文対策の反省について、今日は書いていこうと思います。
私自身、論文が天王山であると考えていたため、新司法試験の論文過去問はすべて三月までに書いて検討していました。結構時間がかかりましたが、論文で試験委員が問いたいことはなんとなくつかめた気がします。
とはいえ、過去問だけでは基本事項すべてを押さえられるわけではなく、問題演習→基本書等で調べるという作業を繰り返し、ある程度網羅的に基本事項を勉強し、書けるようにならなければなりません。
私は、学者の書いた問題集や法学教室の演習、旧司過去問を使っていましたが、択一後5約7週間程度しか時間がなく、10科目をやりきることができませんでした。加えて択一に合格しているかどうかという不安と、急に暑くなる時期で体調を崩したことなど、ボロボロの状態でしたので、満足に勉強をやりきれなかったという最悪の状況でした。
以上の反省を踏まえると、択一には余裕で合格すること(択一で燃え尽きると論文まで持たないです)、年内に択一論文の勉強を終わらせ、出願の時点で択一・論文に合格できる力を養っておくことに尽きます。特に予備試験は出願時から論文試験まで半年ほどあり、長期戦なので正月や春先は少し休めるぐらいの余裕がないと最後の最後で力尽き、僅差で落ちるなんて悔しいことにもなりかねません。
時間も金もやる気も有限です。がんばり続けて結果を出すということはホントに大変なことです。うまく休養を取りながら、持続的に勉強できるようするべきだったと思うのが今年予備論文まで受けた実感です。
H24予備試験の反省②
昨日に引き続き短答式の反省を書いていきたいと思います。
まず,短答式は過去問の焼き直しという手法で問題が作成されているので,過去問を解くことが合格への近道となります。
しかし,過去問を解いているだけでは,おそらく6割ぐらいしかとれないときがあります。その原因は,過去問「知識」としてストックしているからであり,本試験では,知識の他に推論という力も要求されていることに気が付いていないからだと思います。
一見,よく分からない選択肢に迷うことはありますが,条文の趣旨や権利の性質,保護法益・・・あたりから推論すると正解に辿りつけることがあるのも事実です。より高得点を確実に狙うには,確実な知識に加えて知識を前提とした推論できければならないと思います。
次に,各科目別の傾向について。
憲法の人権分野は,基本判例については細かいところまで問題で問われています。基本判例をきちんと読むことは論文対策にもつながると思いますし,基本判例をきちんと読んでいるかどうかが択一のみならず論文での差になると思います。統治はきちんと条文です。論文で統治が問われる傾向にあるので,三権分立の趣旨を踏まえた選択肢の検討をやっておくと統治が論文で出題されたときに役立つかもしれません。
行政法は,行政手続法,行政事件訴訟法は細かいところが聞かれるので,条文を読み込んでおくべきだと思います。これができていなかったので,私の行政法択一の成績は悪かったです。判例百選よりも条文を押さえることが先決だと思います。
民法は典型的な問題がほとんどです。親族相続は落とさないように。
商法は,過去問を解くたびに条文参照してました。商法・商行為・手形も配点が多いので捨て問にするのは,ダメだと思います。手形に関しては,森本滋「手形小切手法講義」(成文堂)の約束手形の一生の箇所がよくまとまっています。これで手形法は満点でしたし,予備論文でもしっかり書けました。
- 作者: 森本滋
- 出版社/メーカー: 成文堂
- 発売日: 2010/04
- メディア: 単行本
- クリック: 1回
- この商品を含むブログを見る
民訴は,裁判官として民事訴訟を運営する立場からの出題が多いので,手続に関しての条文はマスターしておきましょう。弁論主義,自白に関する事例問題についても正答率が悪いのでしっかりやっていれば他の受験生にも差をつけることができます。
刑法は,総論・各論知識を正確に押さえた上で,事例問題を正確に処理できるようにしておくといいかもしれません。
刑訴は,裁判所,弁護人,捜査機関としてそれぞれの立場で訴訟手続についての正確な知識を有し,手続運営ができるかどうかが問われています。条文知識が大事です。
H24予備試験の反省①
試験から一週間が経ち、落ち着いたので予備試験の反省をしようと思います。
まず、短答式から。
予備試験短答式の合格のための内実は、法律科目最低7割の得点、一般教養最低3割の得点で、合計6割の合格ラインとなります。予備短答の法律科目の内容は 司法試験と8割同じ問題が出題され、残りの2割の問題も重判レベルの問題が出題されるので、出題レベルは司法試験と同じだと思います。予備短答法律科目の7割の得点を取るということは、司法試験に換算すると245点くらいとなり、司法試験短答合格者の平均点くらいとなります。したがって、予備試験短答式に合格するのはそれなりにきちんと勉強していないと難しいと思います。
私自身、余裕をぶっこいて短答式対策に特化したのは4月に入ってからでしたが、ホントに超焦りました。。個人的には、12月までの年内に司法試験・予備試験の過去問はすべて解き、7割は点数が取れるようになっておくべきだと思います。余裕ある短答対策が、論文対策への余裕を生み、短答後の論文試験を乗り越えるために役立つと思うからです。
短答式の勉強は、司法試験の過去問を解くことが一番大事です。過去問を解くことによって問われているレベルや分野を把握できますし、なにより短答式の問題作成過程が過去問を参照しながら作られるという点にあるので、受験生もその辺を意識して勉強やると結果が出やすいと思うからです。
短答式の過去問の解き方は、私の場合一回目は六法を参照しながら解いていました。問題を解くごとに条文判例基本書は参照しつつ勉強するのが確実な知識をつける近道だと思います。また、選択肢ごとに○×△と印をつけて、2回目以降の学習の便宜を図っていました。最終的には過去問のすべての選択肢について根拠をつけて確実に正解できることを目指すべきです。
最終的には過去問のすべての選択肢について根拠をつけて確実に正解できるまでは時間がかかります。なので、早めの短答対策をオススメします。
ちなみに私が短答式の勉強で使用していた問題集や教材はこれらです。
- 作者: 東京リーガルマインドLEC総合研究所司法試験部
- 出版社/メーカー: 東京リーガルマインド
- 発売日: 2011/09/27
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
2012年版 司法試験 完全整理択一六法 一般教養 (司法試験択一受験シリーズ)
- 作者: 東京リーガルマインド LEC総合研究所 司法試験部
- 出版社/メーカー: 東京リーガルマインド
- 発売日: 2011/09/02
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
- 作者: 東京リーガルマインド LEC総合研究所 司法試験部
- 出版社/メーカー: 東京リーガルマインド
- 発売日: 2011/08/20
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
- 作者: 東京リーガルマインド
- 出版社/メーカー: 東京リーガルマインド
- 発売日: 2011/10/12
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
- 作者: 東京リーガルマインド
- 出版社/メーカー: 東京リーガルマインド
- 発売日: 2011/10/04
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
- 作者: 東京リーガルマインド LEC総合研究所 司法試験部
- 出版社/メーカー: 東京リーガルマインド
- 発売日: 2011/07/08
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
- 作者: 三井誠
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
- 発売日: 2011/02/24
- メディア: 単行本
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (4件) を見る
- 作者: 高木光,稲葉馨
- 出版社/メーカー: 弘文堂
- 発売日: 2010/03/18
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 9回
- この商品を含むブログ (4件) を見る
- 作者: 山口厚
- 出版社/メーカー: 成文堂
- 発売日: 2010/06
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (10件) を見る
- 作者: 山口厚
- 出版社/メーカー: 成文堂
- 発売日: 2011/11
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 4回
- この商品を含むブログ (5件) を見る
- 作者: 野坂泰司
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2011/06/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- クリック: 3回
- この商品を含むブログ (3件) を見る
- 作者: 戸松秀典,初宿正典
- 出版社/メーカー: 有斐閣
- 発売日: 2010/03/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- クリック: 5回
- この商品を含むブログ (12件) を見る